発達障がいのある方が職場で感じやすい壁と、その乗り越え方

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こんにちは、詩の郷です。

職場で一生懸命にがんばっているのに、「ちゃんとしていない」「やる気がない」と誤解されてしまう——発達障がいのある方が、そんな思いを抱えて働いている場面は少なくありません。
実はその背景には、障がいの特性による“働きづらさ”があり、繰り返しつまづいてしまうことでもあります。

今回は、発達障がいの特性ごとに職場で起こりやすい壁や、本人ができる工夫についてご紹介します。「そうだったのか」と気づいていただけたら嬉しいです。

発達障がいの代表的な3タイプとその特徴

「発達障がい」といっても、その特性や現れ方は人によって異なります。
よく知られているのは、以下の3つのタイプです。

  • ASD(自閉スペクトラム症):対人関係の築き方や会話のやりとりが苦手
  • ADHD(注意欠如・多動症):集中しづらく、気が散りやすい
  • LD(学習障がい):学習分野の一部が著しく苦手

この3つ以外にも、たとえば身体の使い方が不器用になる「発達性協調運動障がい(DCD)」や、ASDに見られることも多い音や光などへの感覚の過敏さなど、さまざまな傾向があります。

どの方にも共通することだけではありませんが、それぞれの特性を理解できると、誤解を減らす第一歩になります。

次の章からは、これらのタイプごとに、職場で現れやすい特徴と、取り組みやすい工夫についてご紹介していきます。

周囲との距離ができやすいASD(自閉スペクトラム症)

ASDの方は、対人関係の築き方や会話のやりとりが苦手で、言葉の裏や相手の気持ちを読み取るのが難しいです。
音や光などの感覚に敏感だったり、特定の物事への強いこだわりが見られることもあります。

以下では、ASDの特性が職場でどのように表れやすいか、そして取り組みやすい工夫についてご紹介します。

 

・雑談が苦手で、職場で孤立しやすい
会話のきっかけがつかめず、話しかけられてもどう返せばいいか分からず戸惑ってしまう。
その結果「無愛想」「冷たい」と誤解され、周囲との距離ができてしまうこともあります。
あいさつパターンで会話の第一歩を:あいさつや一言だけでも決まったパターンを用意しておくと安心。無理に話そうとせず、少しずつ慣れていきましょう。

 

・予定変更が苦手で、急な指示に混乱してしまう
一度立てた予定を変えるのが難しく、変更に強いストレスを感じることがあります。
急な予定変更があると、作業が止まってしまうことも。
変更の可能性も含めて予定を共有:スケジュールを前日から確認する習慣をつける。あらかじめ「変更の可能性がある」と聞いておくだけでも、心の準備がしやすくなります。

ミスや忘れ物で誤解されやすいADHD(注意欠如・多動症)

ADHDは、集中しづらく、気が散りやすい、思いついたことをすぐに行動に移してしまう衝動性があるなど、行動面に特徴が現れやすい障がいです。

以下では、ADHDの特性が職場でどのように表れやすいか、そして取り組みやすい工夫についてご紹介します。

・遅刻や忘れ物が続いてしまう
朝の準備に時間がかかりすぎたり、集中しすぎて出発のタイミングを逃してしまうことがあります。忘れ物も多く、「やる気がない」と誤解されてしまうことも。
朝の不安にそなえるしくみをつくる:出発の30分前にアラームを設定したり、忘れ物チェックリストを使ったりと、聴覚や視覚を使って時間や物の管理をサポートする方法が効果的です。

 

・集中が続かず、仕事にムラが出る
周囲の音や動きに気を取られやすく、ひとつの作業を最後まで続けるのが難しいことがあります。
集中しやすい環境と時間の使い方:作業時間を短めに区切り、間に休憩を挟む。静かな環境で作業するように工夫してみましょう。

読み書きや計算のつまずきが見えにくいLD(学習障がい)

LD(学習障がい)は、知的な発達に遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習の一部に、著しい苦手さが現れる障がいです。

以下では、LDの特性が職場でどのように表れやすいか、そして取り組みやすい工夫についてご紹介します。

 

・文字を読むのが苦手で、書類の確認に時間がかかってしまう
文章を一度で理解するのが難しく、読み返しが何度も必要になることがあります。書類の内容を間違って伝えてしまうこともあり、ミスを責められやすくなってしまうこともあります。
要点を絞って読みやすくする:内容を要点ごとに区切って読む、音声読み上げツールを併用するなど、自分に合った方法を探していくことが大切です。

 

・文章を書くのが苦手で、報告書やメモに時間がかかる
語彙が浮かばなかったり、文字をうまく思い出せなかったりして、内容は頭にあっても書くのが難しいことがあります。
定型文や口頭報告で書く負担を減らす:あらかじめ定型文やフォーマットを用意しておくと安心。口頭での報告を活用できる場面があれば、積極的に取り入れてみましょう。

 

・計算が苦手で、数字の処理にミスが出る
在庫管理や金額入力など、数字を扱う場面でミスを指摘されることが増えると、自信を失いやすくなります。
手順化や時間の余裕で計算ミスを防ぐ:計算は手順化して見える形にしておく、間違えても落ち着いて確認できるように時間に余裕を持たせることがポイントです。

「できない」から始める、自分に合ったやり方探し

ここまで、ASD・ADHD・LDという発達障がいの代表的な3つのタイプについて、それぞれに見られやすい働きづらさとその工夫について、ご紹介してきました。

発達障がいのタイプは異なっていても、「周囲と噛み合わない」「自分の気持ちが伝わらない」「理解されにくい」といった苦しさは、多くの方に共通しています。

とくに「ふつうならできるはず」と思われがちな場面で、特性によるつまづきを説明するのは難しいです。そんなときも、自信を失う必要はありません。「こんな方法ならやりやすいかも」と思える工夫を探していきましょう。

詩の郷では、一人ひとりに合わせたサポートをおこなっています

詩の郷では、入居者さんの特性や生活リズムに合わせて、無理なく安心して過ごせるよう支援をおこなっています。
「自分にできることを少しずつ増やしていきたい」という気持ちに寄り添いながら、一人ひとりの歩みに合わせた支援をこれからも続けていきます。

誰かと比べるのではなく、その人にとっての“やりやすい形”を一緒に見つけていけるような、そんな場所でありたいと願っています。