8050問題の中で見落とされがちな「支援のはざま」

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こんにちは、詩の郷です。

「8050問題」という言葉を、耳にしたことはありますか? 80代の親が、50代の子どもの生活を支え続けている状況のことです。
深刻な社会課題として取り上げられることも増えており、その背景に複雑な事情や支援の届かない部分が潜んでいます。
今回は、そんな「支援のはざま」に焦点を当ててみたいと思います。

親子で抱え込んでしまう家庭の限界

世間からは、当事者の状況が“引きこもり”や“親への依存”といった単純な言葉で一括りにされがちですが、その背景や事情は一人ひとり異なります。
特に家族が障がいを抱えている場合、就労がむずかしいことや、対人関係のストレスが強すぎて社会と距離を置かざるを得ないこともあります。

親と子、それぞれの胸の内には、以下のような思いがあることも多く、気持ちがすれ違って少しずつお互いが疲弊していくのです。

親の思い
「自分たちの問題は家庭の中で解決したい」
「世間に知られるのが恥ずかしい」
「子どもの状況をうまく説明できない」
「年金や貯金でなんとかなるうちは、自分が支えたい」

障がいのある子の思い
「親に迷惑をかけたくない」
「自分の状態では社会に出られない気がする」
「どう相談していいか分からない」
「支援を受けるのは“もっと困っている人”のものだと思っている」

制度の支援からもれやすい人たち

障がいのある方が受けられる支援は、実はたくさんあります。しかし、制度は“申請して初めて”利用できるものがほとんど。親も子も「制度のことがよくわからない」「こんな状態でも使えるの?」と不安や疑問を抱えたまま、手を伸ばせずにいるケースも多いのです。
さらに、以下のような理由から、支援制度につながりにくくなるケースもあります:

  • 障がいの診断を受けていない
    障がいの特性があっても、正式な診断がなければ福祉サービスの対象にならないことがあります。
  • 年齢の要件に合わない
    制度によっては年齢制限があり、対象外となる場合があります。(例:就労移行支援は65歳未満での利用開始が原則とされています)
  • 家族構成によって支援が制限される
    「世帯単位」での所得判定などが影響し、制度利用がむずかしくなることがあります。たとえば、親の年金収入が一定額以上あると、障がいのある子どもが個人としては支援対象外とみなされることがあります。
  • 本人や家族に制度への不信感がある
    過去の経験や周囲の噂から、「頼っても意味がない」と感じ、手続きを避けてしまう場合があります。
身近なところにある“最初の支援”

こうした「支援制度があるのに、うまく利用できずに困っている」状態を抜け出すには、まず「話せる場所」「頼れる人」が必要です。
以下のような窓口が、最初のきっかけになります:

  • 地域包括支援センター
    高齢の親御さんの相談にも対応しており、家庭全体の支援につながるアドバイスが受けられます。
  • 福祉事務所
    生活保護や障がい福祉の制度など、幅広い支援情報を提供してくれる窓口です。制度が使えるかどうかの判断も含め、丁寧に案内してもらえます。
  • 相談支援専門員
    障がいのある方の生活を支えるための計画作成や、サービス利用の相談に乗ってくれる専門職です。本人の希望に寄り添った支援を一緒に考えてくれます。
  • 民間の福祉団体やNPO
    「制度では拾いきれない悩み」を受け止め、柔軟に支えてくれる団体もあります。敷居が低く、話しやすい雰囲気のところも多くあります。詩の郷のようなグループホームも、そうした柔軟な支援のひとつです。
◇“家族だけじゃない”支えを届けたい

詩の郷では、障がいのある方の暮らしを、家族だけに背負わせるのではなく、地域や専門職が共に支える仕組みを大切にしています。
入居される方の日々の暮らしや気持ちに寄り添いながら、「安心して暮らせる場所」をつくっていくこと。それが、私たちの役割です。
「このままでいいのかな」と不安を抱えている方がいたら、どうかひとりで悩まず、まずは一度ご相談ください。