こんにちは、詩の郷です。
障がいのある方が年齢を重ねる中で、「この先も今の暮らしを続けられるのか」「どこで誰と過ごすのか」と、不安を感じることがあります。
自宅で家族と暮らしてきた方も、福祉サービスを利用してきた方も、年を取ることで新たな課題が見えてくることもあるでしょう。
ご家族にとっても、「親なきあと、この子はどう暮らすのか」「兄弟姉妹も高齢になり、支援が難しくなってきた」など、将来への心配は尽きません。
今回は、高齢になった障がい者の体の変化や生活の課題、それを支える制度や支援体制についてお伝えします。
◇年齢を重ねると現れやすい困りごとと、その支援
年齢を重ねることで体力が落ちたり、不安を感じやすくなったりするのは、誰にとっても起こりうることです。
ただ、障がいのある方の場合は、動作や身体の使い方に特有の工夫が必要だったり、日常的に支援を受けながら生活していることも多いため、その影響がより大きく表れやすい傾向があります。
実際の暮らしの中では、以下のような困難が見られるようになります。
・わずかな体力低下が生活に影響しやすい
若いころからの身体への負担が積み重なり、ちょっとした体力の衰えが日常動作の困難につながります。
→ 動線の見直しと福祉用具の活用:日常生活の動線や家具配置を見直すことで、転倒や疲労のリスクを軽減できます。歩行器や手すり、シャワーチェアなどの福祉用具を状況に応じて取り入れると、安全性や動作のしやすさが向上します。移動や立ち上がりが難しい場面では、必要に応じて、ベッドからの起き上がりや椅子への移動、歩行時の手助けなどをおこなう身体介助を取り入れるのも有効です。
・障がい特性によって、体調や不調を言葉にしづらい
主に知的障がいや発達障がいのある方の特性により、加齢に伴う体調や気分の変化をうまく言葉にできないことがあります。本人の感じている不調や違和感が周囲に伝わりにくい状況では、支援のタイミングが遅れがちになります。
→ 気づいてもらえる環境をつくる支援:変化に気づいてもらえる安心感があると、本人の不安も軽減されます。そのためには、まわりの人が日々の様子をていねいに見守り、気になることがあれば支援者どうしで情報を共有していけるような関係づくりが大切です。定期的な医療チェックや、普段との違いを「見える化」する工夫も有効です。
・できていたことが少しずつ難しくなる
年齢を重ねる中で、これまでできていたことが少しずつ難しくなっていくことがあります。障がいのある方の場合、体調や状況の変化に気づきにくいため、新たな支援を受けることに戸惑いや不安を感じたりすることもあります。金銭管理や服薬管理などでは特に、判断や理解の難しさから、必要な支援を受け入れづらいのです。
→ 自信や主体性を守りながらの部分的なサポート:できることは本人に任せながら、難しくなってきた部分にだけ支援を加えると、自信や主体性を守ることができます。こうした関わりが、日々の安心と安定した暮らしにつながります。
・精神的な不安やストレスが強まりやすい
年齢を重ねるなかで起こる体調や環境の変化は、障がいのある方にとって不安やストレスの原因になりやすいものです。なかでも自閉スペクトラムのある方は、見通しの立たない状況や慣れた環境の変化に強い不安を感じやすく、それをうまく言葉にできないため、周囲に伝わらず不安が大きくなってしまうこともあります。
→ 安心できる環境と関係性の継続:生活リズムが整い、予定に見通しがあることで、不安を感じにくくなります。慣れた支援者と継続して関わることも、気持ちを落ち着ける助けになります。身のまわりの小さな変化にも気づいてもらえる環境は、安心して日々を過ごす支えになります。
◇65歳を迎えると、障害福祉から介護保険に切り替わる
障害福祉サービスには原則として年齢制限がありませんが、65歳になると介護保険の対象となり、一部の支援は介護サービスに切り替わります。
実際には、切り替え後も生活が変わらない方もいますが、支援の内容や利用時間が大きく変わり、不便や不安を感じるケースもあります。
【制度の切り替えのイメージ】
障害福祉サービス(障害者総合支援法)
↓(65歳到達時)
高齢者向けの介護サービス(介護保険法)
→ 原則、介護保険が優先される
◇制度が切り替わると、これまでの支援が受けられなくなることがある
障害福祉サービスから介護サービスに切り替わると、これまでと同じような支援が受けられなくなることがあります。
支援の量や内容、使えるサービスの種類、通い慣れた場所など、日々の暮らしに影響が出ることも少なくありません。
・外出のサポート(移動支援や同行援護)が受けられなくなることも
介護サービスには、障害福祉で受けていた外出のサポートに該当するサービスがなく、切り替えのタイミングで利用できなくなる可能性があります。
これまで通院や買い物、地域の活動に使っていた支援が受けられなくなると、生活範囲が狭まり、不安や孤立感が強まります。
→ 生活に必要な支援だと伝えることが、継続へのカギになる
外出のサポートが生活に欠かせない場合は、市区町村や相談支援専門員に早めに相談し、その必要性を具体的に伝えておくことが大切です。
もし継続が認められなかった場合は、地域の移送サービスやボランティア、介護保険内の訪問介護など、別の手段を検討する必要があります。
ただし、介護保険の訪問介護には、病院への移動を一部サポートする仕組みもありますが、買い物や余暇などの外出には使えないのが現状です。
こうした違いをふまえて、介護保険に切り替わる前に今の支援がどこまで続けられるかを確認しておくと安心です。
必要があれば再申請や調整も可能なため、支援者や事業所と一緒に対応を考えていきましょう。
・今までより使える支援の時間が少なくなることがある
介護保険では、支援の必要度に応じて、使えるサービスの時間や回数が決められています。
障害福祉のときよりも利用時間が短くなったり、回数が制限されたりすることがあり、「これまでと同じように生活できない」と感じる方もいます。
→ 必要な支援が足りない場合は、早めの相談と再調整を
介護保険だけでは生活が難しい場合、障害福祉サービスとの併用や、支援計画の見直しによって補えることもあります。
今の支援内容を整理し、「どこが足りなくなるか」「どんな支援が続けられないか」を事前に相談支援専門員と一緒に確認しておくことが大切です。
・通い慣れた事業所が使えなくなる
65歳で制度が切り替わると、それまで通っていた障害福祉の事業所が使えなくなるケースがあります。
介護保険の指定を受けていない事業所は、介護サービスとしての利用ができないため、他の事業所に移なければなりません。
慣れた環境や支援者との関係が途切れるのは、生活に大きな影響を与えます。
→ 利用継続の可否を事前に確認し、変更に備える
今通っている事業所が介護保険に対応しているかを、あらかじめ確認しておく必要があります。
継続できない場合には、新たに利用できる事業所を探し、支援が途切れないよう早めに調整しておきましょう。
◇障害福祉から介護保険に変わっても、必要な支援を続けられることがある
制度が切り替わっても、すべての支援が使えなくなるわけではありません。
障がいのある方にとって生活に欠かせない支援は、一定の条件を満たせば継続できる制度になっています。
また、介護サービスと障害福祉サービスを組み合わせて使えるケースもあります。
・障がいに関する支援は、制度が変わっても継続できる
たとえば生活介護や同行援護など、介護保険では代わりとなるサービスがない支援は、65歳以降もそのまま継続できます。
明らかに生活の安定に必要な場合、制度が変わっても利用できます。
→ どの支援が継続できるか、事前に確認する
今受けているサービスの中に継続できるものがあるかどうかは、市区町村の判断や支援計画の内容により異なります。
65歳になる前に、利用中のサービスを整理し、必要性を明確にして、相談支援専門員や窓口に確認しておきましょう。
・介護サービスと障害福祉サービスを併用できる場合がある
目的の異なるサービス同士であれば、制度をまたいで使えます。
たとえば、日中は障害福祉サービスのの「生活介護」で活動や見守りの支援を受け、自宅では介護サービスの「訪問介護」で食事や排せつの介助を受ける、というように、支援の目的に応じて組み合わせることができます。
→ 具体的な組み合わせは、個別に計画を立てて調整
併用できるサービスは制度ごとに条件が異なるため、希望する支援が実現できるかどうかは個別に確認が必要です。
具体的な支援の内容と暮らしの目標を整理し、相談支援専門員と一緒に計画を立てていきましょう。
◇詩の郷で叶える、年を重ねても安心な暮らし
詩の郷では、年齢を問わず、障がいのある方が安心して暮らせるグループホームづくりを目指しています。
夜間の見守り体制や、通院・服薬のサポート、日々の体調変化への対応など、高齢の方でも無理なく暮らせるよう、細やかな支援をおこなっています。
「年を取っても、ここでなら安心して暮らせる」 そんなふうに思っていただけるよう、これからも寄り添いながら、日々の暮らしを支えていきます。
将来に向けて不安を感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。