こんにちは、詩の郷です。
「制度があるのに、どうして支援が届かないんだろう?」 そんな声を、私たちは日々耳にします。
福祉制度は確かに整備されていますが、それでも支援にたどり着けずに困っている人が少なくありません。
手続きの複雑さ、条件の厳しさ、そして生活の現実とのズレ──支援が必要な人ほど、制度にたどり着けない現実があります。
◇支援サービスが届かない理由
福祉制度は、「困っている人を支える仕組み」としてつくられています。でも実際の暮らしは、そんなに単純ではありません。
障がい、病気、高齢、経済的困窮、家庭内の問題──さまざまな事情が、ひとりの暮らしの中で複雑に絡み合います。
たとえば、障がいのある方が高齢の親を介護している場合。障がい福祉と介護保険は別の制度で、窓口もサービスも分かれています。
同時に使いたくても、それぞれに申請が必要で、調整も簡単ではありません。
制度上は支援を受けられる仕組みがあっても、実際の生活に“そのまま使える”とは限らないのです。
◇制度を利用する前に、心が折れてしまう
支援サービスを使うには、申請・診断・審査・認定……といった手続きを乗り越えなければなりません。
ときには複数の機関に出向き、さまざまな書類を揃え、それぞれの制度のために医師の診断書を別々に用意して、何度も説明しなければならないこともあります。
制度の公平性を守り、不正受給を防ぐために必要なプロセスかもしれませんが、実際にはその手間と時間が、大きなハードルになってしまいます。
「使える制度があるのに、そこまでたどり着けない」──それが現場でよく耳にする声です。
◇制度のすき間を埋める民間支援
そうした制度の“すき間”を埋めるように、地域には多くの民間支援が存在しています。
以下のようなかたちで、さまざまな場面に寄り添う支援がおこなわれています。
- 申請サポート
書類の書き方や提出方法を一緒に確認し、申請作業を支援します。 - 同行支援
病院や役所などに付き添い、不安を軽減しながら必要な手続きができるよう手助けします。 - 生活支援
食事や衣類の提供、買い物や掃除の手伝いなど、日常生活の負担を軽くする支援です。 - 傾聴・見守り
日々の会話や訪問を通じて孤立を防ぎ、心の安心感を支える取り組みです。 - 緊急支援
突発的な困難に対して、一時的な宿泊や物資提供をおこなうケースもあります。たとえば、DVや児童虐待といった家庭内トラブルで緊急に安全な場所が必要になったときや、突然の退去・失業・災害など、すぐに誰かの手が必要な状況を支える支援です。
【NPO法人や地域ボランティアグループなどが民間支援をしている】
こうした支援を行っている団体には、以下のようなところがあります:
- 地域のボランティアグループ
近所同士の助け合いから生まれた活動で、見守りや話し相手、ちょっとした生活の手伝いなどを行っています。 - NPO法人
福祉や子育て、外国人支援など、特定の分野に取り組む団体です。専門的な知識を持ち、継続的な支援が可能です。 - 教会やお寺などの宗教団体
炊き出しや居場所の提供、寄付金による支援など、地域に根ざした活動をしています。 - 社会福祉協議会(社協)
行政と住民の橋渡しをする存在で、相談対応や生活用品の提供など、地域のつながりを活かした支援をおこなっています。
【自治体の福祉課や地域包括支援センターなどが民間支援の相談窓口】
民間支援につながるには、まず相談できる場所を知ることが大切です。以下のような窓口が、支援への入り口になります:
- 市区町村の福祉課
福祉全般の相談窓口。困っている内容を伝えることで、適切な制度や支援につなげてもらえます。 - 地域包括支援センター
高齢者の相談窓口として知られていますが、家族や地域の課題についても幅広く相談できます。 - 社会福祉協議会(社協)
地域に根ざした支援を行っており、制度に限らない柔軟な相談対応が可能です。
【寄付金や助成金などが民間支援の資金源】
民間支援の活動は、「思い」を持った人たちによって支えられています。
「目の前の人を放っておけない」という気持ちから関わる人は多くいますが、交通費や材料費などを自腹でまかなっていると、長く続けることはできません。
そのため、多くの団体では、実際には以下のような方法で資金や物資をまかなっており、これらを組み合わせて、地域の支援活動が成り立っています。
- 寄付や募金
市民や企業からの善意による支え。 - 助成金や補助金
自治体や民間団体が出す資金支援制度。 - 会費や利用料
会員制度や、一部サービスに対する料金でまかなう場合もあります。 - 企業や農家からの現物寄付
食材や日用品などの提供。
◇詩の郷が目指す支援のかたち
詩の郷は、制度に基づいた支援をおこなっていますが、「制度では支えきれない部分」にも丁寧に寄り添いたいと考えています。
ちょっとした声かけや、制度とは関係のないおしゃべりの時間。それもまた、大切な支援のひとつです。
“思い”があるからこそできる支援。“つながり”があるからこそ気づけるサイン。
制度の外側にも、たしかに支えは存在しています。
詩の郷は、そんな存在でありたいと思っています。