こんにちは、詩の郷です。
障がいのある兄弟姉妹のいる方にとって、「親なきあと」のことは、ふとした瞬間に頭をよぎるものの、心の奥深くにずっと残るような大きな不安かもしれません。
今は親が支えているけれど、もし自分がその役割を引き継ぐことになったら…。 そう思うと、不安や戸惑いが押し寄せてくるのも自然なことです。
◇関わりたい気持ち、関われない現実――兄弟姉妹の揺れる思い
障がいのあるご本人とどのように関わっていくかは、人によって本当にさまざまです。
関係性や育ってきた環境、今の暮らしの状況によって、抱える思いは異なります。
支援の現場では、兄弟姉妹それぞれが、さまざまに思い悩みながら、関わり方を模索している姿が見られます。
≪関わりたいと思っていて、行動する気持ちもある≫
- 自分が責任をもって支えたい
親の姿を見てきて、いずれは自分がその役割を担う責任があると、自然に考えている。 - 無理なく自分にできる範囲で
自分の生活を守りながら、できる範囲で何かしら関わりたいと考えている。すべてを背負うのではなく、自分にできることだけを無理なく続けたい。
≪関わりたい気持ちはあるけれど、迷いや困難がある≫
- 関わりたいけど、どうしていいか分からない
相手との関係があまり深くなく、どのように声をかけたり、関係を築いていけばいいのか分からず、戸惑っている。 - 自分のことで手いっぱいで、それどころじゃない
家庭や仕事、心身の調子など、自分自身のことで精一杯。兄弟姉妹のことを思っても、今は関わる余裕がないと感じている。
≪関わらないという選択をしている≫
- 関わりたくない
過去の関係や家庭内での経験から、距離を置くことが自分にとって必要で、関わりたくない気持ちがある。
思いや状況は一人ひとり異なり、兄弟姉妹だからといって、すべてを引き受けなければならないわけではありません。
関わり方の形が決まっているわけでもありません。現実には、揺れる思いを抱えながら、「自分なりの関わり方」を探す姿が、多く見られます。
そして、人の気持ちは、時間の経過や環境、兄弟姉妹との関係性の変化によって、少しずつ変わっていきます。 「今は関われない」と感じている方も、いつか何かできるかもしれないと思える瞬間が訪れるかもしれません。
◇親と兄弟姉妹では、法律上の「扶養義務」の重さがちがいます
兄弟姉妹には「生活扶助義務」があり、できる範囲で支援するというのが民法の考え方の基本です。
無理に背負う必要はなく、支援が難しいときに責任を問われることはほとんどありません。
一方、親と子の間には「生活保持義務」があり、互いの生活を支える強い責任があるとされています。
これは親から子だけでなく、子から親への義務も含まれた双方向の関係です。
ただし、現実には子どもが親を支えるのは難しい場合も多く、兄弟姉妹に求められる「生活扶助義務」に近い感覚で扱われることもあります。
ヤングケアラーの問題が注目される今、未成年や若年層に過度な負担を求めることの問題性も指摘されています。
◇障がい福祉制度を活用すれば“全部を背負わなくていい”
グループホームをはじめとした福祉サービスは、障がいのある方ご本人の権利として利用でき、家族が支えることを前提とした制度ではありません。
たとえば、共同生活援助(グループホーム)は、地域で安心して暮らすための住まいと支援を提供しており、利用者負担が一部あるものの、サービス費は原則公費で支えられる仕組みになっています。
また、判断力に不安のある方がいる場合には、「成年後見制度」を活用すると、家族以外の第三者が手続きや金銭管理をサポートできます。
制度を活用すれば、兄弟姉妹がすべてを背負わずにすむ道も見えてきます。
◇詩の郷は、兄弟姉妹の不安にも寄り添います
詩の郷では、ご本人や親御さんだけでなく、兄弟姉妹の方からのご相談にも丁寧にお応えしています。
制度のこと、将来への備え、関わり方やその距離のとり方など、「これから」を一緒に考えることができます。
今すぐ何かをしなければいけないわけではありません。関わりたいと思っている方も、迷っている方も、関わらないという選択をしている方も――それぞれの思いに、私たちは丁寧に向き合いたいと考えています。
「兄弟姉妹だから」と無理に背負うのではなく、必要なときに、必要な形で。そんな関わり方があってもいい――そう思えるように、私たちはそっと背中を支えていきたいと願っています。