こんにちは、詩の郷です。
児童相談所や保育所などの子どもたちを支える制度は、いまでは当たり前のように私たちの暮らしの中に根づいています。
しかし、その出発点には、多くの人たちの願いと努力がありました。今回は、そうした制度の土台となった「児童福祉法」の成り立ちについて、丁寧にひもといてみたいと思います。
◇子どもたちを守るための法律
児童福祉法は、すべての子どもが健やかに育つことを目的とした法律です。「すべての児童は、等しくその心身の健やかな成長と幸福を保障されるべきである」という理念のもと、家庭環境にかかわらず、子どもたちが必要な支援を受けられる仕組みを整えています。
この法律には、子どもたちが平等に守られるべきだという強い意志が込められています。
◇なぜこの法律が必要だったのか
第二次世界大戦(1939〜1945年)後、日本は深刻な食糧難や経済混乱に直面しました。親を失った戦争孤児や、家に居場所を持たない子どもたちが街にあふれ、その命と生活を守るのが、急務となったのです。これらの子どもたちを支援し、将来に希望を持てる社会を築くため、国として責任を持つ枠組みが必要でした。
当時は、子どもたちの保護を民間の善意に頼っていた時代で、公的な仕組みがほとんどありませんでした。
こうした状況を受けて、子どもたちの未来を社会全体で支えようという声が高まり、法律という形で制度化されていったのです。
◇1947年、児童福祉法の制定
児童福祉法は、1947年(昭和22年)に制定されました。この法律には、子どもたちを守り支えていくことが社会全体の責任であるという姿勢が、明確に示されています。
児童福祉法をもとに、児童相談所の設置や児童養護施設の整備が全国で進められました。
また、地域社会と連携しながら、子どものいる家庭を支える支援のネットワークづくりも本格的に始まっていきました。
◇児童福祉法に基づく主な制度
児童福祉法を土台として、さまざまな支援制度がつくられました。
現在は、子育てや家庭の相談支援の体制を妊娠期から一体的に担う「こども家庭センター」への再編が進められています。自治体によって名称や体制は異なるため、地域によっては「子ども家庭支援センター」や「子育て世代包括支援センター」など、さまざまな呼び方や仕組みが残っています。
制度のあり方が見直されている過渡期にあるため、少しわかりにくさを感じるかもしれませんが、いざという時にはまず相談窓口で話を聞いてもらうことが、支援への第一歩になります。
≪相談窓口≫
・児童相談所
虐待や育児の悩み、家庭での困りごとなどに対応する窓口として、子どもとその家庭を支援する公的な機関です。相談に応じるだけでなく、一時保護や専門的な判断・支援をする施設としての役割も担っています。
・子ども家庭支援センター
子育ての初歩的な悩みから深刻な問題まで、子どもに関するさまざまな相談に幅広く応じる地域の窓口です。子どものいる家庭を支えるのが目的で、必要に応じて、児童相談所や保健センター、教育委員会などの専門機関へつなぐ役割もあります。
≪支援施設≫
・保育所
家庭での保育が難しい場合に、保護者の代わりに子どもを預かり、健やかな成長をサポートします。
・児童養護施設
家庭で暮らすことができない子どもたちに、住まいと日常生活の場を提供する施設です。安心できる環境の中で、心の安定と自立を支援します。
・乳児院
主に0〜2歳までの乳児を対象に、家庭に代わる住まいを提供する施設です。養育や保育を行い、健やかな発育を支えます。
・母子生活支援施設
住まいに困っている母子家庭に、親子で暮らせる住居を提供する施設です。生活の安定と将来の自立に向けた支援をします。
◇今につながる支援の原点として
児童福祉法は、子どもを支える制度の出発点であり、今につながる福祉の流れを生み出した原点です。すべての人が尊厳を持って暮らせる社会を目指す理念は、今も受け継がれています。
詩の郷もまた、その思いを胸に、一人ひとりに寄り添いながら歩んでいます。