自立支援医療制度は、障害を持つ方が自立して生活できるように医療費を軽減する制度です。
精神疾患や身体障害の治療には長期間の医療を必要とするケースが多く、経済的な負担が大きくなります。
この制度を利用すれば、持続的な医療を安心して受けられます。
◇自立支援医療の種類
自立支援医療制度は、対象となる医療の種類によって 精神通院医療、更生医療、育成医療 の3つに分類されます。
≪精神通院医療≫
精神疾患を持つ方が、通院治療を継続するための費用を軽減する制度です。
以下の疾患が主な対象ですが、医師の判断により他の精神疾患も適用される場合があります。
- 統合失調症
- うつ病、躁うつ病(双極性障害)
- てんかん
- 不安障害(パニック障害、強迫性障害など)
- 知的障害
- 発達障害(自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動症(ADHD)など)
精神疾患の治療は長期にわたることが多く、薬物療法やカウンセリング、デイケアなどを継続する必要があります。
負担を軽減しながら適切な治療を続けるため、この制度の利用が有効です。
精神通院医療には、利用者の生活の質を向上させるための 精神科リハビリテーション や 訪問看護 も含まれます。
利用者が日常生活を維持しながら社会復帰を目指すための支援体制です。
≪更生医療≫
更生医療は 18歳以上で身体障害者手帳を持つ方 を対象に、身体機能を回復させるための手術や治療の医療費を軽減する制度です。
主に以下の障害や治療例が対象となります。
- 肢体不自由:関節拘縮に対する人工関節置換術
- 視覚障害:白内障の水晶体摘出術
- 聴覚障害:鼓膜穿孔閉鎖術
- 心臓機能障害:弁置換術、ペースメーカー埋込術
- 腎臓機能障害:腎移植、人工透析
- 肝臓機能障害:肝移植
これらの治療を受けると、利用者の生活の質が向上し、より自立した生活を送れるようになります。
特に、人工関節置換術やペースメーカーの埋込術などは、日常生活への影響が大きいため早期の治療が重要です。
≪育成医療≫
18歳未満の子ども を対象に、先天的な障害や病気の治療費を軽減する制度です。
主に以下の治療例が対象となります。
- 視覚障害:先天性白内障、緑内障の手術
- 聴覚障害:先天性耳奇形に対する形成術
- 言語障害:口蓋裂に対する手術
- 肢体不自由:先天性股関節脱臼や脊椎側彎症の矯正手術
- 心臓疾患:先天性心疾患に対する心臓手術
育成医療では、子どもの成長に応じた適切な治療が重要です。
例えば、先天性の股関節脱臼は、早期の手術が将来の歩行能力を大きく左右します。
◇自己負担額について(所得による負担上限の違い)
自立支援医療制度では、医療費の自己負担額は原則 1割 ですが、世帯の所得状況 によって1か月あたりの負担上限が決まっています。
1. 生活保護受給世帯
- 自己負担額:0円
- 生活保護を受給している世帯は、医療費の自己負担が全額免除されます。
2. 低所得(市町村民税非課税世帯)
- 低所得1:本人または保護者の年収が80万円以下の場合 → 自己負担上限額:2,500円
- 低所得2:本人または保護者の年収が80万円以上の場合 → 自己負担上限額:5,000円
3. 中間所得(市町村民税課税世帯)
- 中間所得1:市町村民税の所得割が 33,000円未満(年収約290~400万円未満) → 自己負担上限額:5,000円
- 中間所得2:市町村民税の所得割が 33,000円以上 235,000円未満(年収約400~833万円未満) → 自己負担上限額:10,000円
※「中間所得1」と「低所得2」は、どちらも自己負担上限額が5,000円に設定されています。
これは、低所得2の世帯が生活を維持しやすいよう負担を抑える一方で、中間所得1の世帯にとっても急な医療費負担の増加を防ぐための措置です。
中間所得層といえども、家族構成や生活費の違いにより、医療費の負担が大きな負担になる可能性があるため、一定の配慮がされています。
4. 一定所得以上(市町村民税課税世帯)
- 市町村民税の所得割が 235,000円以上(年収約833万円以上)の場合 → 自己負担上限額:20,000円
◇「重度かつ継続」の対象者や育成医療の特例措置
「重度かつ継続」 とは、高額な医療費が長期間かかる方を対象に、自己負担上限額をさらに引き下げる制度です。
育成医療の中間所得層 についても、同様の負担軽減措置が適用されます。
この特例措置は、令和9年3月31日まで延長されています。
◇自己負担額の具体例
例えば、市町村民税非課税(収入80万円以下)の世帯 が 10万円の医療費 を利用した場合、通常の1割負担なら自己負担額は1万円です。
しかし、この世帯の負担上限は2,500円なので、自己負担は2,500円で済み、残りの7,500円は制度が補助します。
このように、所得によって負担額の上限が決められており、どれだけ医療費がかかっても一定額以上の負担は発生しない仕組み になっています。
◇制度の今後の展望
自立支援医療制度は、障害を持つ方が継続して適切な治療を受けるために重要な制度です。
しかし、制度の認知度が低く、申請手続きが複雑なことが課題となっています。
今後は、制度の周知と申請手続きの簡素化が進み、より多くの方が安心して利用できることが期待されます。
自立支援医療制度を利用すると、必要な治療を受けながら、より良い生活を送れます。
制度の仕組みを理解し、積極的に活用していきましょう。